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4)自動運航システムの留意点
今後、自動運航システムの普及により、今回実験で得られた成果、即ち、
・正確で操船に有効な情報
・高い安全性
・避航操船・座礁予防の援助
・精神的ゆとり
・チャートワークなどの時間的ゆとり
などが大きく評価された。一方、本システムに馴れることにより、
・肉眼による見張り
・航海の基本的な技術、考え方
・緊急事態対応能力
などが低下するのではないかとの懸念が示されている。したがって、自動運航システムは人間の能力、技術、行動の総てを代行するものではなく、あくまで人間を支援するものであること忘れることなく、新知識とともに基本的事項に重点を置いた教育を施して行かなければならない。
5)Ergonomics
航海システムの統合化にともない、国際的な規則の中に「Ergonomics」という言葉が使われるようになった。即ちシステムの構築に際して「人間工学的配慮をしなければならない」ということが規則の中に入れられるようになってきたのである。そして現在、IM0ではIBS(Integrated Bridge System)やINS(Integrated Navigation System)の性能基準が検討されているが、この中にも、ヒューマンファクターが規定の中に取り入れられているし、また、ISO/TC8/SC5/WG1で検討されている「一人での運航のための船橋の要件」では「Ergonomics principleが操船場所の設計に考慮されなければならない」ことが規定されている。
この度行われた我々の研究はこのように国際的に注目されている自動運航システムのErgonomics principleを世界に先がけて実験し、多くのデータを得るとともに、高い評価を与えられたことは大きな意義があった。このような評価高い成果を今後国際的な場で生かして行ければ幸いである。

 

 

 

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